ため息つかせて
地球上のインベーダーは一掃された。
そして長年地球を汚染し続けてきたゲッター線も除去された。一つの仕事をやり遂げた。
そんな達成感に艦内はいつにない賑やかさで湧いていた。
「空があお〜い!」と言って無邪気にはしゃぐ子供達。
展望ブリッジから離れない者。
写真を撮ろうと女の子を呼び出し、事良くばと悪ノリする脳味噌がふやけた者まで出始めた。「お前ら‥‥」
気持ちは分からなくはない。
──が、「ウッソ!そんなところで何してる!!」
「ケイ、ゴウ!手に持っているのは何だ!は??昼飯はとっくに食べただろ!」
「甲児逃げるなっ!」
「デュオそれは艦の備品だろがーっ!!」ラ・−カイラムは成層圏下をゆっくりと飛行を続けていた。
トレーズから連絡があり次第宇宙に出る手筈であり、地球を出ればそこは新たな戦地である。
緩み過ぎた緊張はいざという時思わぬ油断を生みかねない。幼い子供も同行している以上、ここはどうあっても譲れない。ましてや甘い顔を見せるなど、艦長と しては沽券に関わる問題なのだ。「──前から思っていたんだけどさぁ、ブライト艦長ってホントお父さんみたいよね」
「親父ねぇ。う〜んこれ以上小言言われそうだなぁ」
「オリファーさんとどっちが恐いかしら」
「どっちもどっちというか‥‥」
「‥‥‥あのな、お前ら」
本人達は一応気を遣っているつもりらしいが、子供の声は大きい。そして良く通る。僅か数メートル離れただけの場所での会話は聞き耳立てずと も良く聞こえた。
「用がないならブリッジから出ていけっ!!」
雷は大人だって嫌いだ。
ブリッジの片隅に集まっていた子供達が一目散に逃げ出したのは言うまでもない。「‥‥俺だって、本当はのんびりしたいんだ」
誰もいなくなったブリッジに愚痴が溢れた。
───家族水入らずで‥‥
そう考えると感情がこもるあまり、思わず艦長席の肘掛けをぐぐぐ〜〜〜っと、握りしめてしまう。それからすでに癖と化したため息をつく。
のんびりなんて、それこそ当分無理に違いない。
侘びしく現実を噛み締めていると直通エレベーターが開く音がした。
ブライトの傍らで止まった足音に誰だ、と意気消沈の体で顔を巡らすとアムロだった。「アムロか」
「どうした。覇気がないぜ」
「まあな」
気心の知れた仲だ。相手がアムロだと思うと口調もついついぞんざいになる。ついでに伸ばしていた背筋も丸くなる。
「ブリッジの外で『親父ならあんなに小煩く言わない!』ってケイが息巻いていたぞ」
「俺と弁慶を一緒にしないでくれないか」
笑って言うアムロに恨めしげに視線を流す。
「あれは言っても聞かない彼女に弁慶が諦めてるんだ」
いや、本当のところは言いたくても言えないのかもしれない。なにしろゲッターチームは注意する側が率先して無茶をするのだ。タワーの艦長 だった神にしてもそうだ。艦長職を降りてゲッター2のパイロットに復帰した途端、すっかり竜馬に同調している。
「まったく、集まる連中集まる連中、どうしてこうも一癖も二癖もあるやつらばかりなんだ」
「そういう星の下に生まれたんだと諦めるんだな」
女じゃあるまいしそりゃどういう星の下だ?とブライトは思ったが訊ねる気力も涌いてこない。
「艦長だからみんな甘えているのさ」
「お前は気楽でいいよな」
「いよいよ俺に八つ当たりか」
ブライトのいかにも投げやりな口調にアムロが苦笑を浮かべた。
そんなアムロを見てそういえば目の前にいる相手こそ、かつては「超」のつく問題児第一号だったよなぁとふと昔を思い出す。あれからどのくらい経ったか知ら ないが、アムロも今ではモビルスーツ部隊の隊長さんだ。随分と成長したものだ。それこそ屈折もせず。いや、一時期は屈折していたんだったな。「‥‥なんだよ、その顔は」
「ああ。お前もよくぞここまで成長してくれたと思ってな」
しばらくぽかんとしていたアムロだったが、ブライトの言わんとするところに思い至ると「それを持ち出すか」とさも嫌そうに視線を逃がした。
今では戦友として距離の近くなった二人だが、過去に関してだけは今後もアムロは頭が上がらないだろう。「‥まあ羽目を外し過ぎるのは問題だが大目に見てやれよ。割り切ればその方がかえって楽だぜ」
「羽目を外し過ぎた連中の尻拭いを考えるとますます眠れなくなりそうだ」
「どうやらブライト艦長は悲観の虫に取り付かれてしまったようだぞアムロ」
いつの間にかシャアが横に立っていた。
「それは重大な問題だな」
「おいおい勝手に決めつけないでくれ」
「だったら子供が走っているのを見たらそっちの目を閉じてしまうこと。夜中に声が聞こえてもそれは夢だから気にしない。そうすれば艦長の持 病も少しは和らぐだろう。まあこれは子供達の言葉の受け売りだが」
「大佐、貴方まで子供たちのまわし者ですか」
「ははは。まあそう恐い顔をしないでくれ。艦長の苦労は承知している」
ネオ・ジオン総帥相手にやたら暴言は吐けないと思っていたらその分顔に出ていたか。
「通り掛かったらそこで掴まってしまってね」
どういうわけかアムロ同様シャアも子供受けが良いのだ。ブライトよりも。
目の前の二人ほどではないにしてもブライトだってそれなりにプライドは持っている。内心心穏やかではなく実は結構気にしているのだが、勿論彼らに言えよう 筈がない。「──そうですか。甘い顔を見せるのもほどほどにしておいて下さいよ。アムロ、お前もだ」
「はは。お父さんは怖いな」
「誰がお父さんだ、誰がっ」
「目くじら立てるなよ。お父さんはブライト。そしてお母さんはミライさんってね」
「そういえば一年戦争終了当時は結構有名な話だったな」
「貴方まで乗らないで下さいよ」
釘を指しておかないと目の前の男まで悪ノリしそうな雰囲気だ。話を言いふらしてまわるネオ・ジオン総帥というのも想像出来ないが、子供達に 聞かれでもしたらそれこそ明日から「お父さん」呼ばわりされかねない。そうなった日にはそれこそいい迷惑だ。だいたいあの頃の話をそんな昔話みたく楽しげ に話して良いのか?本人は気にしていないようだからまあいいが。
「そう言えば君についても最近おもしろい話を聞いたぞ」
「は?」
「君はかなりの問題児で二人を手こずらせていたらしいじゃないか」
それまでずっと浮かんでいたアムロの笑みが、そこでぴたりと止まった。
「‥‥誰から聞いたんだ」
「ノア婦人と御子息からだが」
冷たい眼差しがブライトに突き刺さったのは言うまでもない。が、ブライトに直接的な罪はなく、彼は彼で言い分がある。
「対岸の火事だと思っているからだ」
「悪かったよ」
別に隠していたというわけではないが、あの当時の無軌道な行動にはやはり照れくささと恥ずかしさが付いてまわる。久しぶりに過去を持ち出さ れたアムロはもう結構とでもいうように黙って肩を竦めた。
「軍きってのエースパイロットもこうなると形無しだな」
二人のやり取りを愉快そうに見ていたシャアが口を開いた。
「誰のせいだと思ってるんだ」
それこそ不満の声をアムロはシャアに投げて返した。
「そういえば大佐こそ叩けばいろいろと埃が出そうじゃないか」
「私?」
「ラウンジあたりでこれからどうだ。なあブライト」
良いことを思いついたとでも言うようにブライトに同意を求める。
「そうだな。アムロの言う通りひとつやふたつ、隠したい過去というものが誰にもあるのは確かだ」
「待ってくれ。君たちのそれは隠したい過去なのか?」
二人から一度に矛先を向けられ焦りを見せたのは勿論シャアだ。とんだとばっちりである。
「艦長はともかく、君とは全く知らない過去と言うわけでもないだろう。ニュータイプ───」
「生憎と俺は必要のない記憶は忘れる質なんだ」
「と、アムロは言っているが大佐」
「‥‥‥‥」
しばらくして困りはてたらしいシャアのため息が聞こえた。
「‥‥‥何もここで共同戦線を張らなくても良いだろう」
「‥‥‥男三人の井戸端会議か」これはこれで彼らなりにひと息ついているのかもしれない───。
トロワは目覚めぬ頭でそう思った。
実は午後のブリッジ当番を兼ねながら、物陰で惰眠を貪っていたのである。
- ため息つかせて -「スパロボD設定で、ブラアムぎみなシャアム話」
リクエスト4番:は○○ヤ 様◇◇◇ 井戸端会議は女のものと相場が決まっていますがたまには男もありということで。
シャアム度は二人に進展がないので低くてごめんなさい。
代わりにブラアム度は高いかな〜と。
いつになく和気あいあいとした三人組。彼らが手を組んだら本当に強いと思うんですけどね〜。
現実には到底叶わぬ腐女子の夢ですね。
ミネバ様やZの子供二人の事もあってシャアは子供受けが割りと良いという設定にしてみました。
だめかしら?
リクエストありがとうございました!