背 中
 





外の静けさにカーテンを開くと雪が積もっていた。

曇った窓硝子をきゅっきゅと少しだけ手で拭い覗きこめば、燦々と降り続く白い雪。
夜だというのに降り積もった雪のせいで辺りは明るい。木立の影が仄白く青い闇に浮かんでいた。
内へ内へと心を閉じこめる白い世界の深い静けさ。
優しく降り積もる雪が見せる不思議。
これが雨なら影すら見えず、落ちる雫の音で夜はうるさい事だろう。

「明日は冷えるな」

振り向けばシャアがいた。顔にかかる髪もそのままに、柔らかな深みのある笑みを瞳にのせて。
自然アムロの瞳も和やかな光をたたえた。
耳を澄ませばかさかさと雪の落ちる小さな音が、薄い硝子を透き通して聞こえてくるようだった。
アムロは再び窓に目を向けた。
背中が暖かい。
ほんの少しだけ距離を置くシャアの体温が、伝わるのだろう。
近づいて背を預ければ、もっと暖かい事、その身体が力強い事、自分がほっと安堵する事をアムロは知っていた。
今すぐ委ねてしまうのはなんだかもったいない気がして、緊張にも似たこの静けさを壊したくなくて、アムロは雪の降る夜を静かに見つめる。


衣擦れの音と共に背後から両の手が伸び、冷たく白く曇った硝子に押し付けられた。
気が付けばアムロはシャアの作る小さな檻に閉じ込められていた。
密着する背中が熱い。硝子は曇り過ぎてシャアの顔が映る事はなかった。
彼の長い指が目の前にある。
どんな顔をしているのだろう・・・。

「手、冷たくないか。濡れるし」

「ひんやりとして今の私にはちょうど良いよ。君への想いが熱くて、私はのぼせてしまいそうだからね」

「あんたのそれ、一生治らないのかな。聞いてるこっちが恥ずかしいよ」

「長い事君を待ったのだ。このくらい言わせて欲しいものだな」

体温が上昇する。心臓がどきどきする。照れくさくて、嬉しい。恥ずかしくて逃げ出したい。
硝子に額を当てれば、確かにそこはひんやりしていて、アムロののぼせそうな心もほんの少し落ち着きを取り戻す。
目を閉じる。
燦々と雪が降る。


さあ。落ち着いたらどうしようか?
雪の夜は静かで長いものだ。
ふたり、昔話でもしようか・・・・。
眠くなったら抱き合って、互いの温もりに微睡もう。

雪の降った翌日の、寒い朝にはそれは何よりも暖かいだろう。





- 背 中 -

コロニーにどの程度雪が降るか分かりませんが、
「緑陰」に雪が出ていたのを思い出したので
同棲しているお話に・・・・・。

雪の降る夜は本当に静かです。
そんな夜に思いを寄せて・・・。

雨も好きです。