・・・ 光明 ・・・
日没にはまだ間があるにもかかわらず光のささない広間は薄暗く、
陽光の代わりに篝火が最奥までを照らしていた。
その篝火の赤い炎が揺らめく度に、柱の影は頼り無げに揺ら
めき、垂れ下がる天幕は血の色からはしばみ色、
漆黒から群青へと色どりを変えていく。
広間の奥、とりわけ暗い場所の教皇の座す間で、いったいど
れだけの時を費やしたことだろう。
今だ自分を喜ばせる知らせは現れない。
この教皇宮の幾重にも張巡らされた結界の中にあってさえ、
真下で繰り広げられる衝突の余波は波となり
うねりとなり、荒ぶ風となって教皇宮を大きく揺るがしてい
る。
最後に姿を見たのは一昨日だった。
空は暗くなかった。
敷き詰められた星々に、空は銀色に揺れていた。
ピスケス。スコルピオ。オリオン。
ケフェウス。レオ。ジェミニ。
穏やかな声が星座の名をひとつひとつあげていく。
空にはない星達も自分達には見えていた。
昔、私に一晩中星々の名について語ってくれた人がいまし
た。
多くのものを忘れてきましたが、今も忘れられないものがあ
ります。
そう言った彼は、満足げに小さく笑っていた。
静かだった。
張りつめた弦がプツリと切れるように広間の緊張が解け、空気がゆるむ。
気のせいだろうか。
薔薇の香りが鼻孔をくすぐる。
空気が動いた。
風にのって運ばれる、馥郁となる薔薇の香。
ああ・・・。
こうなることは分っていた。
「馬鹿が・・・」
風が、笑った。
・・・それでも私は、あなたを守りたかったのです・・・
唇を掠めとり、
・・・あなたと共に・・・
やがて、静寂が訪れた。
end
自分で書いてて悲しく
なってしまった・・・。
話としては気にいってるんだけどね。
せめてタイトルだけでも、ということで光明にしました。